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大阪地方裁判所 平成9年(ワ)6811号 判決 1999年8月25日

主文

一  被告Aは、原告に対し、金35万8,800円及びこれに対する平成8年10月16日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

二  被告Bは、原告に対し、金39万1,600円及びこれに対する平成8年10月16日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

三  被告Cは、原告に対し、金6万5,700円及びこれに対する平成8年10月16日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

四  被告Dは、原告に対し、金21万2,000円及びこれに対する平成8年10月16日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

五  被告Eは、原告に対し、金7万3,000円及びこれに対する平成8年8月28日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

六  被告Fは、原告に対し、金3万6,000円及びこれに対する平成8年10月16日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

七  被告Gは、原告に対し、金10万6,400円及びこれに対する平成8年10月16日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

八  被告Hは、原告に対し、金14万5,600円及びこれに対する平成8年10月16日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

九  被告Iは、原告に対し、金13万7,500円及びこれに対する平成8年10月16日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

一〇  被告Jは、原告に対し、金4万3,600円及びこれに対する平成9年1月28日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

一一  被告Kは、原告に対し、金29万3,700円及びこれに対する平成8年10月16日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

一二  被告Lは、原告に対し、金10万0,700円及びこれに対する平成8年10月16日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

一三  被告Mは、原告に対し、金22万4,000円及びこれに対する平成8年10月16日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

一四  訴訟費用は、被告らの負担とする。

事実及び理由

第一  請求

主文同旨

第二  事案の概要

一  本件は、被告らが原告補助参加人から購入した教材の費用を立替払いした原告が、被告らに対し、それぞれ立替金の支払を求めている事案である。

二  当事者間に争いのない事実等

1  被告A(以下「被告A」という。)関係

(一) 原告は、平成6年10月7日、被告Aとの間において、同被告が原告補助参加人から購入する教材の代金支払につき、左記のとおりのクレジット契約を締結した。

(1) 被告Aは、原告に対し、原告補助参加人に対する右商品代金49万1,000円の立替払いを委託する。

(2) 被告Aは、原告に対し、右立替金(商品代金)に手数料15万0,246円を付加した合計金64万1,246円を、平成6年11月から平成9年10月まで毎月27日限り金1万2,800円宛て(ただし、初回は金1万3,246円。右期間中7月と12月は金3万円を加算する。)36回に分割して支払う。

(3) 被告Aが右割賦金の支払を怠り、原告から20日以上の期間を定めた書面による催告を受けたにもかかわらず支払をしない場合、同被告は、当然に期限の利益を失う。

(4) 遅延損害金は年6分とする。

(二) 原告は、平成6年10月20日、原告補助参加人に対し、右商品代金を立替払いした(弁論の全趣旨)。

(三) 被告Aは、平成8年1月29日までに合計金28万2,446円を支払った。

(四) 原告は、被告Aに対し、平成8年9月25日到達の書面において20日間の期間を定めて遅滞金の支払を催告したが、同被告は支払わなかった。

2  被告B(以下「被告B」という。)関係

(一) 原告は、平成6年11月12日、被告Bとの間において、同被告が原告補助参加人から購入する教材の代金支払につき、左記のとおりのクレジット契約を締結した。

(1) 被告Bは、原告に対し、原告補助参加人に対する右商品代金49万1,000円の立替払いを委託する。

(2) 被告Bは、原告に対し、右立替金(商品代金)に手数料15万0,246円を付加した合計金64万1,246円を、平成6年12月から平成9年11月まで毎月27日限り金1万7,800円宛て(ただし、初回は金1万8,246円)36回に分割して支払う。

(3) 被告Bが右割賦金の支払を怠り、原告から20日以上の期間を定めた書面による催告を受けたにもかかわらず支払をしない場合、同被告は、当然に期限の利益を失う。

(4) 遅延損害金は年6分とする。

(二) 原告は、平成6年11月30日、原告補助参加人に対し、右商品代金を立替払いした(弁論の全趣旨)。

(三) 被告Bは、平成8年1月29日までに合計金24万9,646円を支払った。

(四) 原告は、被告Bに対し、平成8年9月25日到達の書面において20日間の期間を定めて遅滞金の支払を催告したが、同被告は支払わなかった。

3  被告C(以下「被告C」という。)関係

(一) 原告は、平成6年9月7日、被告Cとの間において、同被告が原告補助参加人から購入する教材の代金支払につき、左記のとおりのクレジット契約を締結した。

(1) 被告Cは、原告に対し、原告補助参加人に対する右商品代金14万6,000円の立替払いを委託する。

(2) 被告Cは、原告に対し、右立替金(商品代金)に手数料3万1,536円を付加した合計金17万7,536円を、平成6年10月から平成8年9月まで毎月27日限り金7,300円宛て(ただし、初回は金9,636円)24回に分割して支払う。

(3) 被告Cが右割賦金の支払を怠り、原告から20日以上の期間を定めた書面による催告を受けたにもかかわらず支払をしない場合、同被告は、当然に期限の利益を失う。

(4) 遅延損害金は年6分とする。

(二) 原告は、平成9年9月20日、原告補助参加人に対し、右商品代金を立替払いした(弁論の全趣旨)。

(三) 被告Cは、平成7年12月27日までに合計金11万1,836円を支払った。

(四) 原告は、被告Cに対し、平成8年9月25日到達の書面において20日間の期間を定めて遅滞金の支払を催告したが、同被告は支払わなかった。

4  被告D(以下「被告D」という。)関係

(一) 原告は、平成6年9月20日、被告Dとの間において、同被告が原告補助参加人から購入する教材の代金支払につき、左記のとおりのクレジット契約を締結した。

(1) 被告Dは、原告に対し、原告補助参加人に対する右商品代金37万2,000円の立替払いを委託する。

(2) 被告Dは、原告に対し、右立替金(商品代金)に手数料9万4,860円を付加した合計金46万6,860円を、平成6年10月から平成9年3月まで毎月27日限り金8,800円宛て(ただし、初回は金1万1,660円。右期間中7月と12月は金4万円を加算する。)30回に分割して支払う。

(3) 被告Dが右割賦金の支払を怠り、原告から20日以上の期間を定めた書面による催告を受けたにもかかわらず支払をしない場合、同被告は、当然に期限の利益を失う。

(4) 遅延損害金は年6分とする。

(二) 原告は、平成6年9月30日、原告補助参加人に対し、右商品代金を立替払いした(弁論の全趣旨)。

(三) 被告Dは、平成7年12月27日までに合計金25万4,860円を支払った。

(四) 原告は、被告Dに対し、平成8年9月25日到達の書面において20日間の期間を定めて遅滞金の支払を催告したが、同被告は支払わなかった。

5  被告E(以下「被告E」という。)関係

(一) 原告は、平成6年9月2日、被告Eとの間において、同被告が原告補助参加人から購入する教材の代金支払につき、左記のとおりのクレジット契約を締結した。

(1) 被告Eは、原告に対し、原告補助参加人に対する右商品代金14万6,000円の立替払いを委託する。

(2) 被告Eは、原告に対し、右立替金(商品代金)に手数料3万1,536円を付加した合計金17万7,536円を、平成6年9月から平成8年8月まで毎月27日限り金7,300円宛て(ただし、初回は金9,636円)24回に分割して支払う。

(3) 被告Eが右割賦金の支払を怠り、原告から20日以上の期間を定めた書面による催告を受けたにもかかわらず支払をしない場合、同被告は、当然に期限の利益を失う。

(4) 遅延損害金は年6分とする。

(二) 原告は、平成6年9月12日、原告補助参加人に対し、右商品代金を立替払いした(弁論の全趣旨)。

(三) 被告Eは、平成7年10月27日までに合計金10万4,536円を支払った。

(四) 原告は、被告Eに対し、平成8年8月7日到達の書面において20日間の期間を定めて遅滞金の支払を催告したが、同被告は支払わなかった。

6  被告F(以下「被告F」という。)関係

(一) 原告は、平成6年5月6日、被告Fとの間において、同被告が原告補助参加人から購入する教材の代金支払につき、左記のとおりのクレジット契約を締結した。

(1) 被告Fは、原告に対し、原告補助参加人に対する右商品代金17万8,000円の立替払いを委託する。

(2) 被告Fは、原告に対し、右立替金(商品代金)に手数料3万8,448円を付加した合計金21万6,448円を、平成6年6月から平成8年5月まで毎月27日限り金9,000円宛て(ただし、初回は金9,448円)24回に分割して支払う。

(3) 被告Fが右割賦金の支払を怠り、原告から20日以上の期間を定めた書面による催告を受けたにもかかわらず支払をしない場合、同被告は、当然に期限の利益を失う。

(4) 遅延損害金は年6分とする。

(二) 原告は、平成6年5月20日、原告補助参加人に対し、右商品代金を立替払いした(弁論の全趣旨)。

(三) 被告Fは、平成8年1月29日までに合計金18万0,448円を支払った。

(四) 原告は、被告Fに対し、平成8年9月25日到達の書面において20日間の期間を定めて遅滞金の支払を催告したが、同被告は支払わなかった。

7  被告G(以下「被告G」という。)関係

(一) 原告は、平成5年9月9日、被告Gとの間において、同被告が原告補助参加人から購入する教材の代金支払につき、左記のとおりのクレジット契約を締結した。

(1) 被告Gは、原告に対し、原告補助参加人に対する右商品代金36万7,000円の立替払いを委託する。

(2) 被告Gは、原告に対し、右立替金(商品代金)に手数料11万2,302円を付加した合計金47万9,302円を、平成5年10月から平成8年9月まで毎月27日限り金1万3,300円宛て(ただし、初回は金1万3,802円)36回に分割して支払う。

(3) 被告Gが右割賦金の支払を怠り、原告から20日以上の期間を定めた書面による催告を受けたにもかかわらず支払をしない場合、同被告は、当然に期限の利益を失う。

(4) 遅延損害金は年6分とする。

(二) 原告は、平成5年9月20日、原告補助参加人に対し、右商品代金を立替払いした(弁論の全趣旨)。

(三) 被告Gは、平成8年1月29日までに合計金37万2,902円を支払った。

(四) 原告は、被告Gに対し、平成8年9月25日到達の書面において20日間の期間を定めて遅滞金の支払を催告したが、同被告は支払わなかった。

8  被告H(以下「被告H」という。)関係

(一) 原告は、平成7年4月4日、被告Hとの間において、同被告が原告補助参加人から購入する教材の代金支払につき、左記のとおりのクレジット契約を締結した。

(1) 被告Hは、原告に対し、原告補助参加人に対する右商品代金20万7,000円の立替払いを委託する。

(2) 被告Hは、原告に対し、右立替金(商品代金)に手数料4万4,712円を付加した合計金25万1,712円を、平成7年4月から平成9年3月まで毎月27日限り金1万0,400円宛て(ただし、初回は金1万2,512円)24回に分割して支払う。

(3) 被告Hが右割賦金の支払を怠り、原告から20日以上の期間を定めた書面による催告を受けたにもかかわらず支払をしない場合、同被告は、当然に期限の利益を失う。

(4) 遅延損害金は年6分とする。

(二) 原告は、平成7年4月10日、原告補助参加人に対し、右商品代金を立替払いした(弁論の全趣旨)。

(三) 被告Hは、平成8年1月29日までに合計金10万6,112円を支払った。

(四) 原告は、被告Hに対し、平成8年9月25日到達の書面において20日間の期間を定めて遅滞金の支払を催告したが、同被告は支払わなかった。

9  被告I(以下「被告I」という。)関係

(一) 原告は、平成7年6月17日、被告Iとの間において、同被告が原告補助参加人から購入する教材の代金支払につき、左記のとおりのクレジット契約を締結した。

(1) 被告Iは、原告に対し、原告補助参加人に対する右商品代金29万2,000円の立替払いを委託する。

(2) 被告Iは、原告に対し、右立替金(商品代金)に手数料3万8,544円を付加した合計金33万0,544円を、平成7年7月から平成8年6月まで毎月27日限り金2万7,500円宛て(ただし、初回は金2万8,044円)12回に分割して支払う。

(3) 被告Iが右割賦金の支払を怠り、原告から20日以上の期間を定めた書面による催告を受けたにもかかわらず支払をしない場合、同被告は、当然に期限の利益を失う。

(4) 遅延損害金は年6分とする。

(二) 原告は、平成7年6月30日、原告補助参加人に対し、右商品代金を立替払いした(弁論の全趣旨)。

(三) 被告Iは、平成8年1月29日までに合計金19万3,044円を支払った。

(四) 原告は、被告Iに対し、平成8年9月25日到達の書面において20日間の期間を定めて遅滞金の支払を催告したが、同被告は支払わなかった。

10  被告J(以下「被告J」という。)関係

(一) 原告は、平成7年1月21日、被告Jとの間において、同被告が原告補助参加人から購入する教材の代金支払につき、左記のとおりのクレジット契約を締結した。

(1) 被告Jは、原告に対し、原告補助参加人に対する右商品代金23万3,000円の立替払いを委託する。

(2) 被告Jは、原告に対し、右立替金(商品代金)に手数料5万0,328円を付加した合計金28万3,328円を、平成7年2月から平成9年1月まで毎月27日限り金6,800円宛て(ただし、初回は金6,928円。右期間中7月と12月は金3万円を加算する。)24回に分割して支払う。

(3) 被告Jが右割賦金の支払を怠り、原告から20日以上の期間を定めた書面による催告を受けたにもかかわらず支払をしない場合、同被告は、当然に期限の利益を失う。

(4) 遅延損害金は年6分とする。

(二) 原告は、平成7年1月31日、原告補助参加人に対し、右商品代金を立替払いした(弁論の全趣旨)。

(三) 被告Jは、平成8年11月27日までに合計金23万9,728円を支払った。

(四) 被告Jは、本件契約における最終割賦金支払日である平成9年1月27日を経過するも、その余の支払をしない。

11  被告K(以下「被告K」という。)関係

(一) 原告は、平成6年10月6日、被告Kとの間において、同被告が原告補助参加人から購入する教材の代金支払につき、左記のとおりのクレジット契約を締結した。

(1) 被告Kは、原告に対し、原告補助参加人に対する右商品代金40万6,000円の立替払いを委託する。

(2) 被告Kは、原告に対し、右立替金(商品代金)に手数料12万4,236円を付加した合計金53万0,236円を、平成6年11月から平成9年10月まで毎月27日限り金9,700円宛て(ただし、初回は金1万0,736円。右期間中8月と12月は金3万円を加算する。)36回に分割して支払う。

(3) 被告Kが右割賦金の支払を怠り、原告から20日以上の期間を定めた書面による催告を受けたにもかかわらず支払をしない場合、同被告は、当然に期限の利益を失う。

(4) 遅延損害金は年6分とする。

(二) 原告は、平成6年10月20日、原告補助参加人に対し、右商品代金を立替払いした(弁論の全趣旨)。

(三) 被告Kは、平成8年1月29日までに合計金23万6,536円を支払った。

(四) 原告は、被告Kに対し、平成8年9月25日到達の書面において20日間の期間を定めて遅滞金の支払を催告したが、同被告は支払わなかった。

12  被告L関係

(一) 原告は、平成6年8月19日、被告Lとの間において、同被告が原告補助参加人から購入する教材の代金支払につき、左記のとおりのクレジット契約を締結した。

(1) 被告Lは、原告に対し、原告補助参加人に対する右商品代金14万8,000円の立替払いを委託する。

(2) 被告Lは、原告に対し、右立替金(商品代金)に手数料4万5,288円を付加した合計金19万3,288円を、平成6年9月から平成9年8月まで毎月27日限り金5,300円宛て(ただし、初回は金7,788円)36回に分割して支払う。

(3) 被告Lが右割賦金の支払を怠り、原告から20日以上の期間を定めた書面による催告を受けたにもかかわらず支払をしない場合、同被告は、当然に期限の利益を失う。

(4) 遅延損害金は年6分とする。

(二) 原告は、平成6年8月31日、原告補助参加人に対し、右商品代金を立替払いした(弁論の全趣旨)。

(三) 被告Lは、平成8年1月29日までに合計金9万2,588円を支払った。

(四) 原告は、被告Lに対し、平成8年9月25日到達の書面において20日間の期間を定めて遅滞金の支払を催告したが、同被告は支払わなかった。

13  被告M関係

(一) 原告は、平成7年1月6日、被告Mとの間において、同被告が原告補助参加人から購入する教材の代金支払につき、左記のとおりのクレジット契約を締結した。

(1) 被告Mは、原告に対し、原告補助参加人に対する右商品代金25万8,000円の立替払いを委託する。

(2) 被告Mは、原告に対し、右立替金(商品代金)に手数料7万8,948円を付加した合計金33万6,948円を、平成7年2月から平成10年1月まで毎月27日限り金6,000円宛て(ただし、初回は金6,948円。右期間中7月と12月は金2万円を加算する。)36回に分割して支払う。

(3) 被告Mが右割賦金の支払を怠り、原告から20日以上の期間を定めた書面による催告を受けたにもかかわらず支払をしない場合、同被告は、当然に期限の利益を失う。

(4) 遅延損害金は年6分とする。

(二) 原告は、平成7年1月20日、原告補助参加人に対し、右商品代金を立替払いした(弁論の全趣旨)。

(三) 被告Mは、平成8年1月29日までに合計金11万2,948円を支払った。

(四) 原告は、被告Mに対し、平成8年9月25日到達の書面において20日間の期間を定めて遅滞金の支払を催告したが、同被告は支払わなかった。

三  争点(抗弁)

被告らは、原告補助参加人との間の契約(以下「本件売買契約」という。)の意思表示が原告補助参加人の詐欺によるものであるから取り消したとして、原告に対する割賦金の支払を拒絶する(割賦販売法30条の4)旨主張しており、原告補助参加人の詐欺が肯認されるか否かが争点である。

1  被告らの主張

(一) 本件売買契約は、次に述べるような事情に鑑みれば、原告補助参加人の詐欺行為によって締結したものといわざるを得ない。

(1) 原告補助参加人は、被告らに対し、本件売買契約の締結に際し、本件売買契約の対象となっている教材(以下「本件教材」という。)が実は2、3万円程度の商品であるにもかかわらず、14万6,000円から49万1,000円相当の商品であるように告げた。

(2) 原告補助参加人は、高校受験を控えた子供をもち日々不安な親心につけ込み、「家庭教師(指導員)の無料体験学習」というでたらめな餌でアポイントをとり、普段から子供に勉強させる方法もよく分からずに悩んでいた被告らに対し、原告補助参加人の単なる営業マンがいかにも専門の学習指導・教育の担当者であるかのような名刺を持って訪問し、「原告補助参加人の家庭教師の派遣を受けるためには本件教材が必要であり、本件教材を購入すればこれを家庭教師が使用して指導し必ず学習効果を高め、公立高校へ入学させることができる。」等と告げて、その学習効果を誇大に宣伝して本件各売買契約を締結させたものである。

しかし、原告補助参加人が派遣した家庭教師は、単なるアルバイト学生であって、右教材に即した、あるいは原告補助参加人が宣伝した指導のできる教師ではなかった上、被告の子供の学習能力・意欲にふさわしい家庭教師とはいえなかったものである。

また、本件教材は、学習能力・意欲の異なる全ての子供に即したものとはいえず、むしろ程度が高く、もともと勉強嫌いの被告の子供には使いこなせないものであった。したがって、せっかく買った右教材は、被告らの子供が自分からは使用しなかったのはもちろんのこと、派遣されてきた家庭教師も、右教材が子供の学習能力や意欲に合っていなかったこともあって、ほとんど使用しなかった。そもそも、原告補助参加人から派遣された家庭教師は、本件教材を使用して教えるようにとは指示されていなかったのである。

このような事情に加えて、本件各立替払契約書(A事件ないしM事件の各甲1)には「役務 無」と記載されていることからも、家庭教師派遣代金は、教材代金とは別料金であり、本件教材代金には何ら役務の対価に相当するものは含まれていなかったものである。

(3) したがって、原告補助参加人は、本件教材がせいぜい2、3万円程度のものにすぎないところ、このことは被告ら購入者には知らせず、家庭教師派遣を前面に出してその学習効果を誇大に宣伝して本件教材を法外な値段で売りつけ、暴利をむさぼっているのであって、詐欺以外の何ものでもない。

(二) 本件売買契約は、原告補助参加人の全体として違法な訪問販売・詐欺によって締結されたものである。

(1) 原告補助参加人は、教材訪問販売の経験豊富なT(以下「T」という。)に本部教務課を設けさせ、一度教材を売りつけ、家庭教師を派遣しても成績の上がらない、あるいは学習意欲のわかない生徒の家庭に対し、しかも母親に的をしぼり父親に内緒の形で、訪問させた営業マンにTが作成したセールストーク集(乙21)記載のとおりの文言を申し向けさせ、専門の指導員などいないのに指導させるようなことを告げたりする一方で、教材ビルダーの内容やビルダーを使用する理由は説明することなく、再びせいぜい2、3万円の別の教材を19万8,000円から49万8,000円もの法外な値段で売りつけていたものである。

(2) 本部直轄管理システムにおいて、実質的な責任者であるTが実際に行っていた「勉強のやる気を起こさせる指導」とは、勉強を実際にやっていなかったら「叱りに行く」「怒鳴りに行く」というだけのものであり、通常行われるような勉強の指導は一切行われていなかったものである。

また、本部直轄管理システムの人員も、Tの他にはU、V、W、内勤の男性1名(2か月ほど勤務していたに過ぎない。)、電話受付の女性事務員しかいなかったものであり、到底まともな指導ができる体制ではなかった。

(3) 被告らを含めた顧客は、専門の家庭教師あるいは本部直轄管理による指導を期待し、そのサービス(役務)を受けることを目的として契約したのであり、教材は従たるもので重要ではなかった。

原告補助参加人の教材販売は、その高額な対価に見合う専門の指導員の派遣や通信添削等の役務の十分な提供がない限り、その代金額からして、1回目の販売も2回目の販売も全ての顧客に対して詐欺行為になるといわなければならない。

2  原告補助参加人の主張

(一) 原告補助参加人の営業担当者は、中学生の子弟をもつ顧客(被告らを含む。)らに対し、まず家庭教師派遣システムの内容や料金が記載された案内状を送付し、これに関心をもった顧客の承諾を得た上で顧客宅を訪問し、右システムに関する具体的説明(これを「無料体験学習」と呼んでおり、訪問前に顧客に説明してある。)をし、さらに家庭教師の料金・家庭教師が通学している大学名などの内容、教材ポールポジションの内容(なお、ポールポジションの内容は決して難し過ぎるということはない。)、料金、同教材を使用して家庭教師の派遣を受けると成果が上がることを説明するのである。顧客は、この説明を聞いた上で、家庭教師派遣契約と教材購入契約の二つの契約(いずれか一つの場合もある。)を、ほとんどは後日に締結するのである。

被告らも、原告補助参加人の営業担当者の説明を聞き、これを了解して契約を締結したのである。

(二) 原告補助参加人は、顧客の家庭教師についての要望を聞き、より要望に近い者を選んで家庭教師として派遣し、一方派遣する家庭教師に対しては、教材を利用しての学習、教材の内容・使い方、子弟の要望に合った学習などを指導しているのであり、家庭教師が教材を利用していないということはない。

(三) 原告補助参加人は、被告らに対し、ポールポジション(5科目3年分)を32万1,000円、ポイントファイブ(5科目第2学年分、第3学年分)を17万円で売り渡したのである。教材の仕入れ代金額の合計は6万9,280円であるものの、その他に消費税、契約社員に支払う報酬などの経費を差し引くと、右売買代金額は相当なものであり、同業他社もほぼ同様の代金額で販売している。

(四) 原告補助参加人は、教材(主としてポールポジション)を販売し家庭教師を派遣した顧客の子弟のうち成績の上がらない子弟につき、成績が上がらないのは勉強する気に欠けていることが大きな原因であるから、この原因解消のための指導システムとして本部直轄管理システムを平成6年10月から発足させたのである。本部直轄管理システムとは、高校受験対策用の模擬問題が多く含まれている教材ビルダーを購入してもらい、子弟の学力、学校での成績その他を聞き、これを資料として一週間学習計画表と冊子を作成送付し、これに従ってビルダーを学習させ、2か月間は週1回定期的に電話を入れて学習の進行具合を聞き、質問に答え、原則として中学卒業(高校入試)まで右計画表に従って学習をさせ、これを実行していることを確認するためノートを提出させ、場合によっては自宅を訪問して指導する等して、子弟を勉強する気にさせるシステムである。

原告補助参加人の契約社員らは、成績の上がらない子弟をもつ顧客に対し、右のような本部直轄管理システムの内容を説明し、顧客はこの説明を聞いた上で右システムによって子弟に学習させることを決め、右システム利用の申込みをなし、同時に右システムで使用する教材ビルダーの購入をする旨の売買契約を締結するのである。

なお、本部直轄管理システムは、教科について講義したり質問に答えたりして教えることが主体ではなく、右顧客の子弟に勉強する気を起こさせることを主たる目的とするものである。その意味で原告補助参加人の契約社員であるTを初めとする本部直轄管理システムの担当者はどのようにすれば勉強するようになるかを常に研究している専門家であり、これらの専門家が家庭を訪問して顧客の子弟が勉強する気になるように指導していたものである。

(五) なお、顧客がビルダーの代金・入会金の名目で支払った金員は、右に述べたとおり、実質的にはビルダーの代価だけではなく、種々のサービスを含む本部直轄管理システム全体の代価である。すなわち、ビルダーの代金額は19万8,000円であるが、そのうち消費税5,940円(3パーセント)、契約社員に支払う報酬が消費税を差し引いた残額の5割で9万6,030円、ビルダーそのものの仕入れ代金2万円、箱代・送料が1,000円、家賃その他の経費が5万0,600円余りで、これらの合計額を右代金額から差し引くと残額2万4,430円となり、これが原告補助参加人の利益となる。このことからも明らかなように、原告補助参加人は、教材ビルダーに本部直轄管理システムという付加価値を付けており、法外な値段で教材を売りつけているとか、暴利をむさぼっているなどいうことはないのである。

第三  当裁判所の判断

一  <証拠略>及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

1  原告補助参加人の会社では、全て歩合制の契約社員に教材の訪問販売を行わせていた。

2  原告補助参加人のセールス担当の社員は、高校受験を控えた中学生をもつ親に焦点を当て、「家庭教師(指導員)の無料学習体験」等の口実を設けて被告らを含む顧客の家庭訪問を行い、単なるセールスマンが「教務主任、指導員」などという肩書の名刺を持参し、被告らに対し、受験勉強のための教材の必要性を説いて本件教材(ポールポジション、ポイントファイブ)を販売した。

この際、予め用意した提携先(原告)のクレジット契約書用紙には、指導員による労務提供(指導)はしないとの前提で、「役務 無」との記載がなされていた。

そして、顧客は、この1回目の教材販売と同時に家庭教師派遣契約も締結するのが通例であり、入会金として3万円を原告補助参加人に支払うことになり、家庭教師派遣代金は教材代金とは別に支払われるものであったが、このことは被告らも了解の上で契約を締結したものである。

3  原告補助参加人が派遣する家庭教師には専門の講師はおらず、大学の校門前などで声をかけた学生をアルバイト家庭教師として登録しておき、教材の購入者宅の近所に居住する学生を紹介していたにすぎず、家庭教師としての登録後も、顧客が購入した教材に即した教授法等の指導はしていなかった。

4  原告補助参加人は、平成6年10月に本部教務課を設立し、課長であるT(以下「T」という。)が考案した「本部直轄管理システム」に基づく生徒の指導をすることにした。Tは、原告補助参加人から教材を購入した顧客の子供(生徒)のうち成績の上がっていない者を対象として、計画表による学習管理(ほとんどは、訪問時に生徒自身に書かせた勉強の可能な時間を本部教務課で学習時間としてあてはめた学習計画表と、その各学習内容の具体的な進め方を各教科毎にまとめた冊子とにより、生徒の学習内容を管理するもの)、契約後2か月間の週毎の電話(この期間、週毎に一度電話を入れて、学習進行具合を聴取したり、質問などに対応するもの)、ノートの提出(実際に学習計画表をもとに学習したノート類を本部教務課宛てに郵便かファックスにより提出させるもの)、訪問指導(勉強するという行為を怠った場合に勉強させるため本部教務課から訪問して指導するもの)を内容として、塾や家庭教師による学習指導と異なる生徒自身の自主学習を体得させるための新しいサポートシステムであるとしている。

Tらは、以前原告補助参加人から教材を購入した顧客に対し、顧客の子弟の学習効果等を確かめるためであるとして電話をかけ、右子弟の点数を聞き出して成績の上がらない子を探し出し、「本部教務課の指導員が一度点検に行く。」などと申し向け、実際には「ワイドグループ本部教務課 課長」の肩書の名刺を持ったTその他のセールス担当社員が訪問した。そこで、T及びセールス担当の社員は、Tが作成した「セールストーク集」(乙21)に基づき、顧客に対し、原告補助参加人が派遣しているにもかかわらず、現在の家庭教師を使った勉強方法ではだめである旨強調して家庭教師を辞めさせるようにしむけた上、「本部直轄にしなさい。子供に勉強する気を起こさせる指導をする。料金も今までの家庭教師代と変わらない。」等と、いかにも子供に勉強する気を起こさせる指導をして成績をあげてみせるような説明をして本部直轄管理システムに切り替えるように説得し、さらにその本部直轄管理システムによる指導に必要な教材であるとして、別の教材(ビルダー)の購入契約を締結させた。

5  しかし、原告補助参加人の本部教務課には教育に携わったことのある専門の指導員などは一人もおらず、顧客が期待したような専門の指導員の派遣や指導などがなされる体制はなかった。

また、実際にも、原告補助参加人側から顧客の子弟に対する積極的な指導等はなされなかったばかりか、自ら勉強してノートを送付していた生徒に対しても指導をしていなかった。

6  なお、Tが作成した「セールストーク集」(乙21)には、次のような記載がなされている。

(一) 私達みたいな本部のプロが直接訪問して、今聞いたように家庭教師の授業状態や、その子自身の家庭教師がいない時の学習状態を調べて、伸びていない直接の原因を追求し、伸びる方向に向けていくようにしているんですよ。

(二) 「できる」ようにさせるためには、弱点を見つけてあげないとダメです。弱点を見つけるには、ハッキリ言って人間では絶対無理です。どう間違うのか、どこまで式を立てられるか、それを見て基礎のどこをどう理解していないのかをコンピューターで見つけるわけです。間違った問題を教える必要はありません。この問題をこういう風に間違ったなら、例えば小六のココをこういう風にやりなさいということを教えてあげればいい。そういう風に沢山の基礎問題に当たらせて、弱点を何度も何度も消していけば、本当の理解ができるし、成績も絶対にあがります。

(三) 何度しなくなっても、とにかく「やらす」、場合によっては、怒鳴りとばしてでも、「やるまでさせる」、ある意味、それくらい厳しくしてやるしかないんです。

(四) ウチとして一番良いと思う改善策は、本部直轄管理システムです。基礎に戻らせるなら、それこそ具体的に「ドコをどういう風に間違っているから、何の何頁に戻って、ノートにどういう形でまとめなさい」というところまで教えてあげないとできません。しかも、勉強は基本的に毎日やっていくものですから、毎日、「今日はどこをどうする。」と教えないとできません。ですから、まずプリントにより、毎日の勉強を全て管理します。しかも、基礎に戻るため、小学校の問題から一度テストし、それによって弱点をさがして、それを直すには「何の何頁をどうまとめる」とか具体的に指示します。つまり、勉強の中身(間違った問題)を教えるんじゃなくて、勉強のやり方、進め方を教えるわけですから、毎週来る必要はありません。直轄管理システムでは、指示の後、やったのかどうかのチェックを入れます。これからは毎週教えに来るではなく、やらないときだけ怒りに来るという形になります。

(五) 直轄管理の金額は、今家庭教師に払っている月々の◎◎円という額とほとんど変わりませんがネ。ただ、弱点をさがすために基礎レベルのテキストはどうしてもプラスします。ただ、また教材を買ってくれとはウチも言えない。さっき言った◎◎円以上はもらいません。基礎に戻るためにいるテキスト代が月々◎◎円だと思って下さい。直轄管理システムは、そのテキストがあれば無料でやっていくという形でやります。月々の◎◎円以外は、1円も要りませんから安心して下さい。申込金として3万円だけいただきます。月々◎◎円の支払は来月からですから、1月目の分だと思ってお願いします。

二  以上の認定事実によると、原告補助参加人の「本部直轄管理システム」というものは、家庭教師をつけても成績があがらない子弟には、どのような家庭教師をつけても無駄だから本部教務課において指導すると説明して勧誘しているのに対し、<1>原告補助参加人の本部にはそのような専門家の指導員もいない、<2>実際にコンピュータで子弟の学習上の弱点の分析を行っていた形跡も全くない、<3>子弟の一人(N)が回答などをした教材に対して、返送することもしていないし、電話で指導することも全くしていないのである。さらに、別の教材(ビルダー)を購入させる必要性についても、適切に説明をしていないのである。したがって、原告補助参加人が行った「本部直轄管理システム」への勧誘及びビルダーの購入に関しては、原告補助参加人の詐欺行為であるといわなければならない。

三  しかしながら、本件で問題となっているのは原告補助参加人からの1回目の教材(ポールポジション、ポイントファイブ)購入契約であるところ、原告補助参加人による1回目の教材購入の勧誘については、次の理由から、果たして詐欺に該当するか否か疑問が残るものである。

1  確かに、ポイントファイブの出版元からのセット価格は中学二年生及び三年生の合計9万2,000円である(調査嘱託の結果)のに対し、例えば被告Aに対してはポイントファイブ17万円、ポールポジション32万1,000円で原告補助参加人は販売している。したがって、元々の価格に比較して高額になっている。

しかしながら、この事実だけをもって、社会生活上許容できないような勧誘行為であって詐欺であるとはいえないのではないかと考える。仮に、仕入れ価格に比べてかなり高額の小売価格であっても、購入契約に当たって、その内容を納得して購入しているのであれば、その勧誘行為は詐欺とまではいえないというべきである。さらに、購入契約締結の勧誘に当たり、売主側が買主側に対して仕入れ価格を明示すべき義務を常に負っているとまではいえないのであって、本件においても、仕入れ価格を教えてほしいと言われたのにあえてその回答を拒絶したのであれば格別、そのような事実があったとまでは証拠上認められない以上、仕入れ価格を明示せずに勧誘した行為は、そのことだけをもって詐欺であるとまではいえないのではないかとの疑問が払拭できないのである。

2  被告らは、家庭教師の派遣をしてもらうつもりで原告補助参加人の営業担当社員の訪問を受けたものであり、原告補助参加人のセールスの口実には若干問題がある(家庭教師の無料体験学習が実際に行われたと認めるに足りる証拠はない。)ものの、被告らのうち、希望した者は全員家庭教師の派遣を受けている上、家庭教師代金は本件売買契約の代金とは別に支払うことを了解していた(当事者間に争いがない。)のである。

さらに、原告補助参加人から派遣された家庭教師の中には、1回目の購入契約による教材であるポイントファイブやポールポジションを使って、被告らの子弟を指導していた者がいた(乙28、丙25の3)ものであって、その他にも1回目の教材を使って勉強を教えていた家庭教師がいたものと推認される。

そして、被告らの中には本件契約を締結してから1年以上も継続的に割賦金を支払い続けてきた者がほとんどであり、詐欺にあったと認識していたのか疑問の余地があるのである。

3  また、被告Aの供述や証人Gの証言は、本部直轄管理システムへの切り替え及びそれに伴うビルダーの購入については騙されたという認識が強烈なようであるが、1回目の教材購入について騙されたという認識があるのか判然としない印象を払拭できないのである。

4  被告らは、本件各契約と本部直轄管理システムへの移行勧誘とが一体となっているから、第1回の教材購入契約である本件各契約も全体として違法な詐欺による意思表示である旨主張する。確かに、前記2判示のとおり、本部直轄管理システムへの移行勧誘行為(これに伴ってビルダーの購入を斡旋する行為)は違法な詐欺行為というべきであるから、これと一体となっているのであれば、全体として違法な詐欺行為であると評価できる。

しかしながら、本件各契約の勧誘が本部直轄管理システムへの移行勧誘と一体となっていたと認定するには躊躇を覚えるものである。本部直轄管理システムが考案されたのは、Tが原告補助参加人本部教務課の課長に就任した平成6年10月ころであって、これより以前に締結された教材購入契約は本部直轄管理システムへの移行勧誘行為と全体として一体となっているとまではいえないはずである。そして、本件各契約は、その過半数が平成6年10月よりも前に締結されたものであるから、本部直轄管理システムへの移行勧誘と全体として一体である(いわゆる二重売り)と認定するには疑問が残るといわざるを得ない。また、平成6年10月以降に契約締結された分についても、この教材購入等によって成績が上がればいわゆる二重売りができないのであるから、当初から本部直轄管理システムへの移行(いわゆる二重売り)を企図したものといえるほどの強い関連性を有するものと認定できるのか疑問が残るものである。

四  結論

以上のとおり、被告らの主張する詐欺(抗弁)を肯認するにはなお疑問が残るといわざるを得ないから、被告らの抗弁を肯認するには至らない。したがって、原告の本訴請求はいずれも理由があるというべきである(なお、仮執行宣言は相当でないから付さないこととする。)。

(裁判官 藤田昌宏)

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